【詳細】Acronis Cyber Protect Cloud バックアップ編:環境を問わないデータ保護とユニバーサルリストア

はじめに

ディーネットのよろず請負人、深見です。

前回までの記事では、「あんしんクラウドバックアップ」のサービスエンジンである Acronis Cyber Protect Cloud について、機能の概要と、バックアップ・サイバーセキュリティのユースケース(対象 OS 付き)を紹介しました。

→ 第1回:バックアップ&サイバーセキュリティの対策は大丈夫ですか?
→ 第2回:Acronis Cyber Protect Cloud を利用したユースケース

第3回となる本稿では、バックアップ機能 にフォーカスして、次の4つの観点からユースケースを紹介します。

  1. インフラを問わない、幅広いバックアップ:オンプレミスからクラウドまで
  2. ユニバーサルリストア(Universal Restore):異なるインフラ環境への復元
  3. 多岐にわたるデータ保護:ワークロードからアプリケーションまで
  4. 最新機能による利便性の向上

ご留意ください
「あんしんクラウドバックアップ」は Acronis Cyber Protect Cloud をベースとしたサービスですが、Acronis Cyber Protect Cloud のすべての機能を提供しているわけではありません。本稿で紹介する機能の中には、「あんしんクラウドバックアップ」ではご利用いただけないものが含まれる場合があります。また、最新機能の一部は、サービス提供事業者向けの機能です。動作要件や提供プランなどの詳細は、弊社までお問い合わせください。

本稿の情報源について

対応環境や機能の説明は、Acronis 公式ドキュメント(Cyber Protect Cloud 26.09、2026年10月時点)と、2026年のリリースノートをもとにしています。各ユースケースは、分かりやすさのための 想定例 です。
皆様の課題への参考となればと思います。


4つの観点

1. インフラを問わない、幅広いバックアップ

Acronis Cyber Protect Cloud は、物理環境・仮想環境・クラウド・SaaS など 30種類以上のワークロード を、単一のエージェントとコンソールでまとめてバックアップ・復元できます。保存先も、オンプレミスのストレージと Acronis クラウドストレージから選べます。

対象環境の主なものは次のとおりです。

分類 対象 保護の方式
OS(物理・仮想マシンの中) Windows、Linux、macOS、Windows on ARM エージェントをインストール
仮想化基盤 VMware ESXi / VMware Cloud Foundation、Microsoft Hyper-V、Nutanix AHV、Scale Computing HC3、oVirt / Red Hat Virtualization、Virtuozzo、Proxmox VE、Cyber Frame 仮想アプライアンスまたはエージェント(多くはエージェントレスで仮想マシン単位に保護)
パブリッククラウド Microsoft Azure 仮想アプライアンス(Agent for Azure)
NAS Synology NAS(DSM 6.2 / 7) 仮想アプライアンス(Agent for Synology)
SaaS・ID Microsoft 365、Google Workspace、Microsoft Entra ID クラウド間バックアップ

※ Linux は、カーネル 2.6.9 から 7.0 までが対象です。macOS は macOS 13 以降が対象で、Apple シリコンにも対応しています。
※ 対応するバージョンや条件は、環境ごとに異なります。詳細は弊社までお問い合わせください。

2. ユニバーサルリストア(Universal Restore)

Universal Restore は、異なるハードウェアや仮想マシンへの復元でも、OS を問題なく起動できるようにする、Acronis 独自のベアメタル復元技術です。

  • 最近の OS は、異なるハードウェア(VMware や Hyper-V を含む)に復元しても、そのまま起動することが多くあります。
  • 復元後に OS が起動しない場合は、ブータブルメディアから Universal Restore を適用し、起動に必要なドライバーやモジュールを更新します。
  • 対象は Windows と Linux です。
  • 物理から物理だけでなく、物理から仮想(P2V)、仮想から仮想(V2V)、仮想からクラウド(V2C)への移行にも使えます。

3. 多岐にわたるデータ保護(ワークロードとアプリケーション)

ディスク全体やファイルを保護する「ワークロードのデータ保護」に加えて、データベースやメールサーバーなど アプリケーションの保護 にも対応します。

区分 対象
ワークロード Windows / Linux / macOS のサーバー・PC、仮想マシン、NAS
アプリケーション Microsoft SQL Server、Microsoft Exchange、Active Directory、Oracle Database、MySQL / MariaDB
SaaS・ID Microsoft 365(Exchange Online、SharePoint Online、OneDrive、Teams、OneNote)、Google Workspace、Microsoft Entra ID

SQL や Exchange など、より幅広いワークロードへの対応は、Advanced Backup の機能です。

4. 最新機能による利便性の向上

2026年は、バックアップ関連の機能強化が続いています。たとえば次のようなものです。

  • 復元できることの検証を、クラウド上で実行できる(クラウド検証)
  • クラウドストレージへのバックアップ・復元が、複数の並列ストリームで高速化
  • 選択したフォルダに、後から作られた新しいファイルも自動で対象にできる
  • 新しい OS や基盤(Windows on ARM、Linux カーネル 7.0、ESXi 9.0 など)への対応

詳細は、各ユースケースと、後半の「最新機能ダイジェスト」で紹介します。


バックアップのユースケース

例1:物理・仮想・クラウド・SaaS が混在する環境を、ひとつのコンソールで守る

  • 状況:本社には物理サーバーと VMware の仮想基盤、拠点には NAS、クラウドには Azure 上のサーバー、さらに Microsoft 365 も利用している。環境ごとにバックアップ製品が異なり、運用が煩雑になっている。
  • 活用する機能:単一のエージェントとコンソール、エージェント方式とエージェントレス方式、ローカル / クラウドの保存先
  • 効果:環境ごとに別の製品を使い分ける必要がありません。同じコンソールで、保護状況の確認と設定ができます。保存先も、オンプレミスと Acronis クラウドストレージから選べます。
  • 対象環境:上の「対象環境」の表のとおり(Windows / Linux / macOS、VMware、Hyper-V、Nutanix AHV、Azure、NAS、SaaS など)

例2:老朽化した物理サーバーが故障し、別のハードウェアで復旧する(Universal Restore)

  • 状況:保守切れ間近の物理サーバーが突然故障した。同じ機種の予備機はなく、メーカーも異なる新しいサーバーしかない。
  • 活用する機能:システム全体(ディスク)のバックアップ、ブータブルメディア、Universal Restore
  • 効果:OS、アプリケーション、設定をまとめて、別のハードウェアに復元できます。環境を最初から構築し直す必要がなく、復旧時間を短縮できます。復元後に起動しない場合は、Universal Restore で起動に必要なドライバーを更新します。
  • 対象環境:Windows / Linux
  • ご留意:CPU アーキテクチャが異なる環境(ARM と非 ARM)へのディスクバックアップの復元は、対象外です。Mac も、Intel 搭載機と Apple シリコン搭載機の間でのディスクレベルの復元はできません(ファイルとフォルダの復元は可能です)。復元先のハードウェアによっては、ドライバーの準備が必要になる場合があります。

例3:物理サーバーの仮想化や、基盤の移行にバックアップを活用する(Universal Restore / VM 変換)

  • 状況:老朽化した物理サーバーを、仮想基盤に集約したい。あるいは、ハイパーバイザーの変更や、クラウドへの移行を検討している。
  • 活用する機能:Universal Restore による、異なるプラットフォームへの復元(P2V / V2V / V2C)、Advanced Backup のオフホストでの VM 変換
  • 効果:バックアップをもとに、異なる環境へ復元できます。移行元のサーバーはそのまま残るため、移行先での動作確認が済むまで、切り替えを待てます。移行のためだけの専用ツールを、別に用意する必要がありません。
  • 対象環境:Windows / Linux
  • ご留意:例2と同じく、ARM と非 ARM の間の復元は対象外です。

例4:基幹データベース・メール・認証基盤を、アプリケーション単位で守る

  • 状況:SQL Server の業務データベース、Exchange のメールサーバー、Active Directory が稼働している。ディスク全体のバックアップだけでなく、アプリケーションの整合性を保った保護をしたい。Linux 上の MySQL / MariaDB や、Oracle Database も使っている。
  • 活用する機能:アプリケーション対応のバックアップ(Agent for SQL、Agent for Exchange、Agent for Active Directory、Agent for Oracle、Agent for MySQL / MariaDB)、Advanced Backup の追加ワークロード対応
  • 効果:アプリケーションを意識したバックアップにより、データベースやメールシステムを、整合性を保った状態で保護できます。VMware 環境では、エージェントレスの仮想マシンバックアップでも、アプリケーション対応のバックアップが利用できます。
  • 対象環境:
    • SQL Server / Exchange / Active Directory:Windows
    • Oracle Database:Windows / Linux
    • MySQL / MariaDB:Linux
  • ご留意:SQL / Exchange / Active Directory 用のエージェントは、Windows Server 2025 には対応していません。Windows on ARM でも、SQL、Exchange、Active Directory、Oracle、Hyper-V、VMware 用のエージェントは使えません。対応するアプリケーションのバージョンは、公式ドキュメントで確認してください。

例5:SaaS と、認証基盤(Entra ID)まで守る

  • 状況:Microsoft 365 と Google Workspace を全社で利用している。退職や誤削除への備えに加えて、認証基盤である Microsoft Entra ID の設定ミスや誤操作にも備えたい。
  • 活用する機能:Microsoft 365 バックアップ(Exchange Online、SharePoint Online、OneDrive、Teams、OneNote)、Google Workspace バックアップ、Microsoft Entra ID バックアップ
  • 効果:SaaS のデータを、サービス側とは別にバックアップとして保持できます。Entra ID は、組織、オブジェクト、レコード、個別のプロパティなど、必要な粒度で復旧できます。ライブデータや、ほかのバックアップと比較して、設定の変化(構成のずれ)を見つけることもできます。2026年9月のリリースでは、組織、ユーザー設定、グループ設定、ロール設定、カスタムドメインも保護対象に加わりました。
  • 対象環境:クラウドサービスが対象のため、端末の OS には依存しません
  • ご留意:Entra ID バックアップは2026年6月に追加された新しい機能です。

最新機能のユースケース

例6:「戻せる」ことを、クラウド上で検証する(クラウド検証 / Run VM 検証)

  • 状況:バックアップは取っているが、リストアテストをしたことがない。検証用のハイパーバイザーを社内に用意する余裕もない。
  • 活用する機能:クラウド検証(Validation in Cloud)、Run VM によるバックアップ検証、Advanced Backup のオフホスト検証
  • 効果:バックアップを仮想マシンとして実際に起動し、復旧できることを確認できます。クラウド検証は Acronis Cloud のインフラ上で実行されるため、検証のためのオンプレミスのハイパーバイザーは不要です。「バックアップが存在すること」ではなく、「復旧できること」を確かめられます。
  • 対象環境:クラウド検証は、Windows / Linux のバックアップが対象です。保存先は Acronis Cloud(サービス提供事業者が運用するストレージを含む)です。
  • ご留意:クラウド検証は2026年6月、Run VM 検証の提供パッケージ拡大は同年7月に発表された、新しい機能です。

例7:日々の運用を楽にし、保護の漏れを減らす

  • 状況:
    • 選択したフォルダから一部のファイルを除外して設定したところ、後から作られた新しいファイルが、バックアップ対象から外れていた。
    • NAS 上の共有フォルダのバックアップに時間がかかり、NAS への負荷も大きい。
    • 大容量のサーバーを、クラウドへバックアップ・復元するのに時間がかかる。
  • 活用する機能:
    • 選択したフォルダの新規ファイルのバックアップ(2026年9月)
    • NAS 向けの、ファイルレベルバックアップの高速化と、追記専用バックアップの信頼性向上(2026年9月)
    • クラウドストレージへの、マルチストリームでのバックアップ・復元(2026年6月)
  • 効果:
    • フォルダごとに、後から作られた新しいファイルを含めるか、含めないかを明示できます。保護の抜けを防げます。
    • NAS の増分バックアップは、フォルダのファイル一覧と更新時刻をまとめて読み取ることで、高速化され、NAS への負荷も下がります。また、ネットワークフォルダへのバックアップは、フルと増分を組み合わせた方式に切り替わり、バックアップチェーン単位で削除されます。アーカイブが破損するリスクを抑えられます。
    • クラウドストレージへのバックアップと復元は、複数の並列ストリーム(既定は4本。回線帯域に合わせて調整可能)で実行され、大容量データの処理時間を短縮できます。
  • 対象環境:ファイル・フォルダのバックアップ(新規ファイル)、ネットワーク共有 / NAS、クラウドストレージ

最新機能ダイジェスト(新しい環境への追従)

時期 内容 利便性
2026年5月 Linux カーネル 7.0 に対応 最新カーネルへアップグレードしても、バックアップを継続できる
2026年5月 Windows on ARM 向けエージェントの拡充(ブータブルメディア、CDP、再起動を伴う復元) x86 と ARM の両方の端末を、ひとつのコンソールで保護できる
2026年6月 VMware Cloud Foundation 9.0 / ESXi 9.0 のエージェントレスバックアップ 最新の VMware 基盤でも、バックアップ・復旧・レプリケーション・変換に対応
2026年8月 Proxmox VE 9.1 / 9.2 に対応 バックアップから仮想マシンへの変換や、バックアップからの直接起動が可能
2026年9月 Nutanix AOS 7.3 / 7.5 のエージェントレスバックアップ 最新の Nutanix AHV でも、仮想マシンを保護できる

ご留意ください

  • Windows on ARM は、Windows 11 と Windows Server 2025 が対象です。ワンクリック復旧や、SQL、Exchange、Hyper-V、VMware 用のエージェントなど、一部の機能は使えません。
  • macOS は、2026年9月のリリースから、macOS 13 以降が対象です。macOS 12 以前は対象外となりました(すでにインストール済みのエージェントは、引き続き動作します)。

まとめ

バックアップ機能を、4つの観点で整理すると、次のようになります。

観点 ポイント
インフラを問わない保護 物理、仮想、クラウド、NAS、SaaS を、単一のエージェントとコンソールで保護できる
Universal Restore 異なるハードウェアや基盤への復元、P2V / V2V / V2C の移行にも使える(Windows / Linux)
多岐にわたるデータ保護 ワークロードに加えて、SQL、Exchange、Active Directory、Oracle、MySQL / MariaDB、SaaS、Entra ID まで
最新機能 クラウド検証、マルチストリーム、新規ファイルの自動対象化など、運用の手間と保護の漏れを減らす改善が続いている

バックアップは「取ること」だけでなく、「異なる環境でも戻せること」「戻せると確認できること」まで含めて、はじめて役に立ちます。自社の環境(OS、仮想化基盤、アプリケーション)を洗い出したうえで、どの機能が必要かを整理してみてください。

お問い合わせ

本稿では、Acronis Cyber Protect Cloud のバックアップ機能をユースケースとともに紹介しましたが、「あんしんクラウドバックアップ」は Acronis Cyber Protect Cloud をベースとしたサービスであり、すべての機能を提供しているわけではありません。動作要件や提供プラン、対応環境の詳細は、お気軽に弊社までお問い合わせください。

参考資料

  • Acronis 公式ドキュメント「Supported operating systems and environments for backup and recovery」(Cyber Protect Cloud 26.09)
  • Acronis 公式ドキュメント「Using Universal Restore」(Acronis Cyber Protect)
  • Acronis Cyber Protect Cloud リリースノート 26.05 / 26.06 / 26.07 / 26.08 / 26.09

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