目次
はじめに
ディーネットのよろず請負人、深見です。
前回の記事では、「あんしんクラウドバックアップ」のサービスエンジンとして使用している Acronis Cyber Protect Cloud について、バックアップ機能とサイバーセキュリティ機能を紹介しました。
→ 前回の記事
今回は続きとして、それらの機能が どのような場面で役立つのか を、ユースケース(想定例)として紹介します。
あわせて、各ユースケースで どの OS(Windows / Linux / macOS)が対象なのか も併記します。実際の環境は、Windows を中心に Linux サーバーや Mac が混在していることが多く、OS によって使える機能が異なる場合があるためです。
なお、本稿で扱うのは バックアップ(Advanced Backup を含む) と サイバーセキュリティ(Advanced Security を含む) の機能に限定しています。
ご留意ください
「あんしんクラウドバックアップ」は Acronis Cyber Protect Cloud をベースとしたサービスですが、Acronis Cyber Protect Cloud のすべての機能を提供しているわけではありません。本稿で紹介する機能の中には、「あんしんクラウドバックアップ」ではご利用いただけないものが含まれる場合があります。動作要件や提供プランなどの詳細は、弊社までお問い合わせください。
対象 OS の表記について
対象 OS は、Acronis 公式ドキュメント「Supported protection features by operating system」(Cyber Protect Cloud 26.09、2026年10月時点)の内容をもとにしています。
- 保護機能(セキュリティ機能)は、保護エージェントを導入したマシン が対象です。VMware や Hyper-V の仮想マシンをエージェントなし(エージェントレス)でバックアップしている場合は、バックアップのみが対象となり、セキュリティ機能は使えません。
- Windows on ARM や、OS の細かなバージョン条件は機能によって異なります。詳細は公式ドキュメントまたは弊社までお問い合わせください。
1. バックアップ機能のユースケース
例1:ファイルサーバーの障害や誤削除から復旧する(標準バックアップ)
- 状況:ファイルサーバーのディスクが故障した。あるいは、担当者が共有フォルダの資料を誤って削除してしまった。
- 活用する機能:ローカル / クラウドストレージへのバックアップ、暗号化と重複排除
- 効果:バックアップから必要なデータを復元できます。保存先にクラウドを選べば、拠点の火災や水害でサーバーとローカルのバックアップが同時に失われる場合にも備えられます。重複排除により、保存容量も抑えられます。
- 対象 OS:Windows / Linux / macOS(各 OS 用のエージェントで保護)
例2:退職者のメールや OneDrive のデータを守る(Microsoft 365 バックアップ / メールアーカイブ)
- 状況:退職した社員のアカウントを整理した後で、過去のメールや OneDrive 上の資料が必要になった。
- 活用する機能:Microsoft 365 バックアップ(Exchange Online、SharePoint Online、OneDrive、Teams、OneNote)、メールアーカイブ
- 効果:サービスごとにバックアップ対象を選べます。メールアーカイブにより、監査やコンプライアンスの要件に備えた長期保存も可能です。
- 対象 OS:Microsoft 365 などのクラウドサービスが対象のため、利用者の端末 OS には依存しません(管理コンソールは Web ベースで、OS を問いません)
例3:頻繁に更新されるファイルを直前の状態まで戻す(Advanced Backup:継続的データ保護)
- 状況:設計図面や見積書など、日中に何度も更新されるファイルがある。夜間のバックアップだけでは、障害時に半日分の作業を失ってしまう。
- 活用する機能:継続的データ保護(CDP)
- 効果:ファイルやフォルダの変更を継続的に取得するため、障害の直前に近い状態まで戻せます。失われる作業量を最小限にできます。
- 対象 OS:Windows のみ(Linux / macOS は対象外)
例4:多数の端末が一斉に使えなくなった(Advanced Backup:ワンクリック一括復旧)
- 状況:更新プログラムの不具合や感染で、複数のサーバーや PC が一斉に起動しなくなった。
- 活用する機能:ワンクリック一括復旧
- 効果:1台ずつ復旧作業をするのではなく、多数のマシンをまとめて復旧できます。業務停止の時間を短縮できます。
- 対象 OS:ご利用環境により異なります。詳細は弊社までお問い合わせください。
例5:「本当に戻せるか」を本番に影響なく確認する(Advanced Backup:オフホスト検証)
- 状況:バックアップは取っているが、リストアテストをしたことがない。テストのために本番サーバーに負荷をかけたくない。
- 活用する機能:オフホスト検証・複製・VM 変換
- 効果:本番機とは別の環境で、検証や複製を実行できます。いざという時に復元できないという事態を、事前に防げます。
- 対象 OS:ご利用環境により異なります。詳細は弊社までお問い合わせください。
例6:バックアップが改ざんされていないことを示す(Advanced Backup:公証)
- 状況:監査や取引先への説明で、データが当時の状態のまま保管されていることを示す必要がある。
- 活用する機能:バックアップの公証(Notarization)
- 効果:ブロックチェーン技術を用いて、バックアップの完全性と非改ざんを証明できます。
- 対象 OS:ご利用環境により異なります。詳細は弊社までお問い合わせください。
2. バックアップ + サイバーセキュリティのユースケース
例7:ランサムウェアの暗号化を止め、被害ファイルを元に戻す(Active Protection)
- 状況:従業員が不審なメールの添付ファイルを開き、PC 上でランサムウェアが動き出した。
- 活用する機能:Active Protection(標準セキュリティ機能)
- 効果:AI の振る舞い検知が、暗号化の挙動をリアルタイムに検知して停止します。すでに暗号化されたファイルは、ローカルキャッシュから自動的に復元されます。さらに Windows 環境では、バックアップファイル自体も改ざんから守る自己防衛機能が働くため、最終的な復旧手段が残ります。
- 対象 OS:Windows / Linux / macOS
- ランサムウェアの AI 検知と、ローカルキャッシュからの自動復元は、3つの OS で利用できます。
- 暗号通貨マイニングの検知や、バックアップファイルの自己防衛などは、Windows のみが対象です。
例8:感染したバックアップから復元してしまう事態を防ぐ(Advanced Security:バックアップのマルウェアスキャン)
- 状況:ランサムウェアの感染後、バックアップから復旧しようとしている。ただし、感染前のどの時点なのかが分からない。感染済みのデータを復元して、再び感染してしまう可能性がある。
- 活用する機能:バックアップのマルウェアスキャン
- 効果:バックアップデータ自体をスキャンして、感染していない状態を確認したうえで復元できます。二次被害を避けられます。
- 対象 OS:Windows のみ(Linux / macOS は対象外)
例9:攻撃の影響をロールバックし、そのまま復旧する(Advanced Security + EDR:ワンクリック対応)
- 状況:EDR が高度な攻撃を検知し、複数のファイルや設定に影響が及んでいることが分かった。
- 活用する機能:ワンクリック対応(攻撃に応じたロールバックと復旧)
- 効果:攻撃の内容に応じたロールバックと復旧を、ワンクリックで実行できます。検知から復旧までを、同じプラットフォーム内で完結できます。
- 対象 OS:Windows / Linux / macOS(EDR の対象 OS)。実行できる対応内容の詳細は、弊社までお問い合わせください。
3. サイバーセキュリティのユースケース
例10:USB メモリ経由の情報漏えいやマルウェア持ち込みを防ぐ(デバイスコントロール)
- 状況:従業員が私物の USB メモリを業務用 PC に接続し、データを持ち出そうとする。あるいは、感染した USB メモリが持ち込まれる。
- 活用する機能:デバイスコントロール
- 効果:USB メモリなど外部デバイスの接続を制御し、情報漏えいを防ぎます。
- 対象 OS:Windows(Linux は対象外)
- macOS は、Intel プロセッサの Mac で macOS 13 を使用している場合のみ対象です。Apple シリコン(M1 / M2 など)の Mac は対象外です。
例11:端末のセキュリティ状態を把握し、弱いところから改善する(#CyberFit スコア)
- 状況:管理している PC の台数が多く、どこから手を付ければよいか分からない。
- 活用する機能:#CyberFit スコア
- 効果:端末のセキュリティ状態がスコアとして可視化されるため、弱点のある端末を把握して優先順位を付けられます。
- 対象 OS:Windows のみ(Linux / macOS は対象外)
例12:未知のマルウェアや脆弱性を突く攻撃に備える(AI ベースのマルウェア対策 / ゼロデイ・エクスプロイト対策)
- 状況:まだ対策パターンが公開されていない新しいマルウェアや、修正プログラムの提供前の脆弱性を狙った攻撃が来る。
- 活用する機能:AI ベースのマルウェア対策、振る舞い解析、ゼロデイ / エクスプロイト対策
- 効果:既知のシグネチャに頼らず、振る舞いで判断するため、未知の脅威にも対応しやすくなります。
- 対象 OS:
- マルウェア対策(リアルタイム保護、振る舞い解析):Windows / Linux / macOS(Linux は対応するディストリビューションが限定されます)
- エクスプロイト対策:Windows のみ
例13:不審な Web サイトへのアクセスをブロックする(URL フィルタリング)
- 状況:従業員が、フィッシングサイトや不正なサイトへのリンクをクリックしてしまう。
- 活用する機能:URL フィルタリング
- 効果:不正・危険な Web サイトへのアクセスをブロックできます。
- 対象 OS:Windows / macOS(macOS 13 以降)。Linux は対象外です。
例14:少人数の IT 担当でもインシデント調査を進める(生成 AI による調査支援)
- 状況:セキュリティの専門担当者がおらず、アラートが出ても何が起きているのか判断しにくい。
- 活用する機能:生成 AI によるインシデント調査・分析・自動対応(Advanced Security + EDR)
- 効果:生成 AI が、調査・分析・対応を対話形式でガイドします。専門知識が十分でなくても、調査を進めやすくなります。
- 対象 OS:Windows / Linux / macOS(EDR の対象 OS)。生成 AI 機能の詳細は、弊社までお問い合わせください。
4. Acronis Cyber Protect Cloud ならではのユースケース
バックアップとセキュリティが ひとつのプラットフォーム・ひとつのエージェント にまとまっていることで、次のような使い方ができます。
検知から復旧までを同じ基盤で完結する
セキュリティ製品とバックアップ製品が別々だと、攻撃を検知した後に、バックアップ側で別途復旧作業をする必要があります。Acronis では、Active Protection による自動復元や、EDR のワンクリック対応で、検知から復旧までを同じ基盤の中で進められます(例7、例9)。
- 対象 OS:Windows / Linux / macOS
安全な状態に戻せることを確認してから復元する
バックアップのマルウェアスキャンと、オフホスト検証、公証を組み合わせることで、「バックアップが取れている」だけでなく「感染しておらず、改ざんされていない、戻せるバックアップである」ことまで確認できます(例5、例6、例8)。
- 対象 OS:バックアップのマルウェアスキャンは Windows のみです。そのほかの機能の対象 OS は、お問い合わせください。
バックアップ自体を攻撃から守る
ランサムウェアは、バックアップデータも狙います。Acronis のソフトウェアやバックアップファイルを守る自己防衛機能により、復旧の最後の砦を守りやすくなります(例7)。
- 対象 OS:バックアップファイルの自己防衛は Windows のみです。
Windows・Linux・macOS 混在環境を、ひとつのコンソールで管理する
Web ベースの管理コンソールは OS を問わず利用できます。ひとつのエージェントとコンソール、ひとつの保護プランで、バックアップとセキュリティの設定をまとめて扱えるため、エージェントの追加や管理画面の使い分けが不要になり、少人数の IT 担当でも運用しやすくなります。EDR は Windows / Linux / macOS のいずれにも対応しています(例9)。
- 対象 OS:管理コンソールは OS を問いません。管理できる機能の範囲は OS ごとに異なります。
機能別の対象 OS 早見表
| 機能 | Windows | Linux | macOS |
|---|---|---|---|
| 標準バックアップ(エージェントによる保護) | ○ | ○ | ○ |
| 継続的データ保護(CDP) | ○ | × | × |
| Active Protection(ランサムウェアの AI 検知、ローカルキャッシュからの自動復元) | ○ | ○ | ○ |
| バックアップファイルの自己防衛 | ○ | × | × |
| バックアップのマルウェアスキャン | ○ | × | × |
| セーフリカバリ(復元時のマルウェアスキャン) | ○ | × | × |
| マルウェア対策(リアルタイム保護、振る舞い解析) | ○ | ○ | ○ |
| エクスプロイト対策 | ○ | × | × |
| URL フィルタリング | ○ | × | ○(macOS 13 以降) |
| デバイスコントロール | ○ | × | △(Intel Mac の macOS 13 のみ) |
| #CyberFit スコア | ○ | × | × |
| EDR | ○ | ○ | ○ |
※ Linux は、機能によって対応するディストリビューションとバージョンが限定されます。
※ Windows on ARM は、機能によって対応状況が異なります。
※ オフホスト検証、ワンクリック一括復旧、公証など、表に載せていない機能の対象 OS は、お問い合わせください。
まとめ
ユースケースと対象 OS を整理すると、次のことが分かります。
- ほとんどの機能は Windows が対象になります。Windows 環境では、バックアップとセキュリティの両方を幅広く活用できます。
- Linux や macOS は、機能が限定される場合があります。ただし、Active Protection(ランサムウェア対策)、マルウェア対策、EDR は、3つの OS で利用できます。
- 仮想マシンをエージェントなしで保護している場合は、バックアップのみが対象です。セキュリティ機能を使いたい場合は、エージェントの導入をご検討ください。
自社の環境にどの機能が使えるのかは、OS の構成によって変わります。まずは、保護したいサーバーや PC の OS を洗い出してみることをお勧めします。
お問い合わせ
本稿では Acronis Cyber Protect Cloud の機能をユースケースと対象 OS とともに紹介しましたが、「あんしんクラウドバックアップ」は Acronis Cyber Protect Cloud をベースとしたサービスであり、すべての機能を提供しているわけではありません。動作要件や提供プラン、対象 OS の詳細は、お気軽に弊社までお問い合わせください。