Dify v1.10.0 リリース情報 - イベント駆動型ワークフローの実装
はじめに
こんにちは、ディーネットのよろず請負人、深見です。
GitHub での公開から少し時間が経ちましたが、Dify の最新版 v1.10.0 のリリース情報をまとめました。今回の目玉は、イベント駆動型ワークフローの導入です。これにより、これまで手動で実行していた作業やAPIコールが不要になり、ワークフローを自動的に実行できるようになります。
Dify v1.10.0 の主な変更点
1. トリガー機能の導入
この機能は、ワークフローを自動的に実行するための新しい「スタートノード」です。ユーザーの手動操作やAPI呼び出しを必要とせず、設定したスケジュールや外部システム(GitHub、Gmailなど)からのイベントに応答して、ワークフローを自動起動できます。
トリガーとは?
「何かが起こったら(When something happens)→ 何かをする(Do something)」という考え方で、繰り返し発生するプロセスの自動化や、サードパーティアプリケーションとの連携によるデータの同期・処理をシームレスに実現します。
現在サポートされているトリガーの種類
-
Schedule(スケジュール)
時間ベースでワークフローを定期実行します。日次、週次などの定期処理に最適です。 -
SaaS Integration Event(SaaS連携イベント)
Slack、GitHub、Linearなどの外部SaaSプラットフォームからのイベントを、プラグイン経由で統合します。 -
Webhook(ウェブフック)
外部システムからのHTTPコールバックに応答し、リアルタイムでワークフローを起動します。

利用上の注意点
これらのトリガー機能は現在「ワークフロー」でのみ利用可能です。Chatflow、Agent、BasicChatではまだサポートされていませんので、ご注意ください。
2. マーケットプレイス
Difyのマーケットプレイスでは、人気のトリガープラグインが複数提供されています。これらを活用することで、すぐにイベント駆動型ワークフローの構築を開始できます。既存のテンプレートやプラグインを利用することで、開発時間を大幅に短縮できるでしょう。

3. コントリビューターへの感謝
今回のリリースは、多くのコントリビューターの協力によって実現しています。彼らの献身的な貢献に心から感謝いたします。オープンソースコミュニティの力を改めて実感するリリースとなっています。
詳細な変更点(What’s Changed)
v1.10.0 では、新機能の追加に加え、多数のバグ修正、リファクタリング、パフォーマンス改善が行われています。
新機能(feat)
- イテレーションノードへの
flatten_output設定の追加 - RAGツールの推奨機能とプラグイン管理UIの改善
- Tencent TraceとのLLMコアメトリクス統合の強化
- ワークフローの一時停止状態管理機能の導入
- オーディオコンテンツのサポート追加
- トリガー機能の実装(上記で詳述)
- 会話オープナーモーダルでの空の開始ステートメント保存防止バリデーション
- フィードバックボタンからフォーラムへのリダイレクト変更
バグ修正(fix)
- ドキュメントチャンク設定更新時の500エラーの解決
- イテレーションノードの表示に関する問題の修正
- エージェントがワークフローツールの出力を重複して表示する問題の修正
- 知識ベースの参照情報が上書きされる問題の修正
- ツールページで
installation_idが不足している問題の修正 - Pythonパッケージの脆弱性対応
- その他、API、ドキュメント、バージョン管理に関する多数の修正
リファクタリング(refactor)
- インストール済みアプリコンポーネントの改善
- ドメインモデルと直接的なデータベースアクセスの分離
- プラグインインストールプロセスにおけるステータスハンドリングの最適化
- SQLAlchemy 2.x Mapped型ヒントの追加
- Repositoryパターンを用いたモデル層の実装による保守性向上
その他(chore)
- i18nファイルの翻訳と型定義の更新
- 依存関係の更新(
testcontainers、@happy-dom/jest-environment、tablestoreなど) - GitHub ActionsワークフローへのWebタイプチェックステップの追加
- モデル設定画面での警告メッセージ表示に関するUI問題の修正
- pre-commitフックへのタイプチェックの追加
- ワークフローログの自動クリーンアップ機能をデフォルトで無効化
- 未ログインユーザー向けのUX改善
おわりに
Dify v1.10.0 のリリースにより、Difyはさらに強力で柔軟なAIアプリケーション開発プラットフォームへと進化しました。特にイベント駆動型ワークフローの導入は、自動化の可能性を大きく広げ、以下のようなユースケースでの活用が期待されます。
- 定期的なデータ処理やレポート生成
- 外部サービスとの連携による自動通知
- GitHub のイベントに応じた CI/CD パイプラインの起動
- Slack メッセージをトリガーとした自動応答システム
開発者やビジネスユーザーは、これらの機能を活用することで、より効率的にAIアプリケーションを構築・運用できるようになるでしょう。
ぜひ、Dify v1.10.0 の新機能をお試しください!
補足情報
注意: Dify v1.10.0 のリリースは GitHub 上では公開されていますが、執筆時点では Dify 管理コンソールのメニュー通知では v1.9.2 と表示されたままになっています。アップデートの適用状況については、公式ドキュメントをご確認ください。
参考リンク
この記事は Dify v1.10.0 のリリースノートを基に作成されています。最新の情報については公式サイトをご確認ください。